設立趣意書

『ギリシャ哲学セミナー』の開催は、私たち古代ギリシャ哲学を研究する者たちの有志十数人が集まって計画したものです。『ギリシャ哲学セミナー』は、会員制の研究会で、毎年一回、共同研究セミナーを開くことを主な活動としてゆく予定です。

その主な目的は、

  1. 古代ギリシャ哲学の研究のために共同すること、
  2. 中堅研究者どうしが自分たちで哲学すること、
  3. 国際学会に参加できるための素地となる日本の学問社会をつくること、

などです。

古代ギリシャ哲学研究の関連学会としては、現在、「日本哲学会」や「日本西洋古典学会」などがありますが、これらに加えて、特に「古代ギリシャ哲学」研究のための集まりがあってもよいと思われます。また、既存の大きな学会は、若い研究者に発表の場を提供し、これを育成するための任務に追われていますが、これとは別に、中堅研究者たち自身が、お互いに自分たちの研究を発表しあい批評しあって、自分たちが哲学するための小さな研究会もあってよいのではないでしょうか。また第三に、私たちが国際学会に参加するのは、哲学の対話の輪を広げるためですが、その前にまず私たちの間に対話の輪を作ることが必要ではないでしょうか。私たちが国際学会に参加したとき、「そのことについて私たちは日本でこういう議論をしています」という発言ができるようになりたいと思います。

『ギリシャ哲学セミナー』の活動としては、さしあたり、毎年一回、夏休みの終り(9月の第三週あたり)に、『ギリシャ哲学セミナー』という研究会を開催することだけを考えています(会員には発表原稿を配布します)。 これは、日本の中堅の研究者がお互いの仕事を知り合うということを第一の目的にしたいからで、この会を発展させて権威ある学会にするとか、学会誌を発行してこれに掲載する論文の公募や審査をするということは考えていません。しかし他方、将来、共同セミナーの「主題研究」の報告をふやして、その成果をシンポジウム論文集として出版するといった計画は、いろいろ考えられると思います。

セミナーそのものの形式は、ほぼ今年の第一回セミナーのプログラムのとおり、「主題研究」の部(第一日)と「自由研究」の部(第二日)に分けて行います。主題研究は、毎年あらかじめ研究主題を決めて、これについて複数の会員に発表していただき、参加者全員で討論するものです。一つの主題について集中的に研究することでの成果を期待しています。自由研究は自由なテーマによる発表と討論です。いずれも発表時間40分、討論時間60分を目安とし、合計100分を予定しています。「談話会」は親睦と対話のための会で、簡単な飲物とスナックを用意します。ただし通例の懇親会とは異なり、御馳走はありません。

『ギリシャ哲学セミナー』の会員(維持会員)は、最初に、ギリシャ哲学の中堅の研究者の方々に入会のご案内を出して募集します。その後に入会を希望する方は、会員一名の推薦によって入会を認めることにしたいと思います。会員の資格は、この会の趣旨から中堅研究者であることが望ましいかと思われますが、あえて定めることはしません。会員以外のセミナーへの臨時参加は、臨時会費を支払った上で、だれでも自由に認められることにします。

『ギリシャ哲学セミナー』の運営は、初めのうちは世話人が、近辺の方々に準備委員を委嘱し、その協力を得てやっていきたいと考えております。ただし、セミナーの総会やはがきアンケートによって全会員の知恵を集め意向を反映することに努め、会員の全員が「自分たちの会」と感じられる会にすることを理想にしたいと思います。

 

1997年3月『ギリシャ哲学セミナー』世話人
天野正幸・神崎繁・田中享英・山本巍

 

[ 初心忘るべからずの自戒をこめて、1997年3月発足時の趣旨説明をほぼ原文のまま掲載しました。ただし開催時期、討論時間などは、その後の変更により変更しました。また「論集」の発行については考え方の変化があり、「親睦会」はこれほど禁欲的ではなくなりました。]

 

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